会長ご挨拶

ⅤUCAの時代における公認会計士の役割

日本公認会計士協会 会長 手塚正彦日本公認会計士協会会長 手塚正彦

1.はじめに

 平素より当協会の会務に対して、ご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 新型コロナウィルスの感染の収束が見通せない中で、日々医療の最前線で治療にあたっている医療従事者の皆様に心から敬意を表し、深く感謝を申し上げます。また、感染により亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げるとともに、罹患された皆様の1日も早いご回復をお祈り申し上げます。

 10年ほど前から、混沌とした社会・経済環境を、Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの4語の頭文字で表すVUCAという言葉がよく使われるようになりました。コロナ禍により、以前にも増してVUCAを実感することとなった今、年頭にあたり、会長として思うところを述べることとします。

2.コロナ禍の経験を踏まえた企業決算・監査に関する重要課題

 コロナ禍によって、生活様式や働き方が大きく見直されました。今後も、テレワークなどの新しい働き方が普及し定着していくでしょう。また、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)も加速します。企業も監査人も、新しい仕事のやり方が定着することを前提として、ICT(情報通信技術)基盤の整備、DXの促進、大きな変革に適合するガバナンスと内部統制の整備等、それぞれの立場において改革を加速する必要があります。当協会も新しい監査の在り方について検討を進めるとともに、その実現のために会員を支援してまいります。

3.ポストコロナにおける経済構造の転換・好循環への貢献

 コロナ禍が我が国の経済や社会に深刻な打撃を与える中、政府は、 国民の命と暮らしを守り、経済を回復させ、新たな成長の突破口を切り開くために「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を昨年12月に示しました。当協会としても、これに貢献すべく、以下の施策に取り組んでまいります。

(1) グリーン社会の実現に向けた企業情報開示の充実と信頼性確保
 ESG投資の急速な普及とグリーン社会の実現に向けた世界の潮流は、企業に非財務情報開示の充実を迫っており、当協会は、「企業情報開示・ガバナンス検討特別委員会」を設置し、企業情報開示の有用性と信頼性の向上に向けた課題と対応の方向性及び公認会計士が果たすべき役割について取りまとめ、昨年9月に公表しました。今後も検討を続け、企業情報開示の充実とその信頼性の確保に貢献してまいります。

(2) ベンチャー企業成長支援
 コロナ後の日本経済を支えるためには、イノベーションをもたらすベンチャー企業を育成し、産業の新陳代謝を促進することが必須です。当協会は、昨年、「IPO支援に関わる独立開業の公認会計士名簿」を公表するとともに、「IPO を目指す企業の監査の担い手となる中小監査事務所リスト」を公表するなど、公認会計士や監査法人が、ベンチャー企業の成長段階に応じて適切なサービスを提供できる環境整備を進めてまいります。

(3) 地域活性化・中小企業支援
 コロナ禍によって東京圏の人口が転出超過となるなど、地域の生活に関心を持つ人が増加する兆しが見えています。当協会は地域経済を支える中小企業支援を地域活性化策の軸に据えて、行政、地域金融機関、経済団体等との連携を深め、経営・財務管理のコンサルティング、事業承継・M&A支援、税務サポート等の公認会計士が強みを発揮できる領域において中小企業を支援してまいります。

(4) 公認会計士に求められる能力の変化への適応
 コロナ禍は、社会全般にわたるDXを加速させる契機となりました。公認会計士にも、ICTとデータの活用についての知見を高めることが求められています。また、企業情報開示の拡充は、新たな知見の獲得を公認会計士に要求しています。そして、不確実な時代は、自ら問題を発見し、課題を設定して解決に向けて行動できる「課題解決型」の公認会計士をこれまで以上に求めています。当協会は、公認会計士が、より良い企業やより良い社会の創造に貢献していると社会から評価されるよう、能力向上を支援する取組を進めてまいります。

(5) 教育への貢献
 当協会は、ともすれば専門家に求められるものと思われがちな会計についての知識は、本来、生活スキル及びビジネス・スキルを育むうえで必須であると考えのもとに、昨年12月に、生涯を通じて身に付けるべき会計の知識を整理した「会計リテラシー・マップ」を公表しました。折しも学習指導要領の改訂により、今年4月から中学校、高等学校の授業で「会計情報の活用」が順次取り上げられます。当協会は先生方に授業で使っていただくマテリアルを開発するなど、教育現場のご支援にも取り組んでいます。今後も、会計リテラシーの普及に注力してまいります。

4.信頼ある安心社会への貢献を目指して

 VUCAの時代に、社会の持続性と経済の発展を両立し、人々が安心して暮らせる世界を実現するためには、社会に信頼を創り出すことがこれまで以上に求められると考えます。 公認会計士は、制度創設以来70年以上にわたり財務諸表監査等を通じて信頼を創り続けてきました。そして、その能力を活かして、今では、監査以外の領域にも貢献の場を大きく広げて信頼を創り出しています。将来の不確実性が高まる中で、社会に信頼を創り出し、人々に安心を届けることこそが、これからの公認会計士に期待される役割です。当協会は、公認会計士がその役割をしっかりと果たせるように、会員を支援してまいります。

 本年が、コロナ禍を皆で克服し、明るく笑顔に満ちた年となることを強く願うとともに、皆様の益々のご健勝とご活躍を祈念し、年頭のご挨拶といたします。

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